1952年,コペンハーゲンでポリオの大流行が起こり,呼吸不全患者が次々に命を落としていました。麻酔科医Ibsenは気管切開を施し,用手的に陽圧換気を行うという前例のない試みによって多くの命を救い,陽圧式人工呼吸の有効性を世に示しました。

しかし間もなく,陽圧換気そのものが肺を傷害し,原疾患が治癒しても亡くなる患者がいることが明らかとなりました。さらに,強い自発呼吸努力が悪影響を及ぼすことも分かってきました。呼吸をサポートすることも,自発呼吸を温存することも,時に肺や全身を傷つける―このパラドックスが呼吸療法を繊細で複雑なものとしました。

こうした困難に追い打ちをかけたのが「患者ごとの違い」です。急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は,その原因や病態,治療への反応性,回復過程が一人ひとり異なります。画一的なプロトコルでは複雑な病態に対応できない現実が明らかとなり,そのことが今なおARDSの死亡率が40%にも及ぶ理由とされています。

このような背景から,現代の呼吸療法には「個別化」が強く求められています。目の前の患者ごとに,最も安全で効果的な呼吸療法を行うための知識を身につけることは容易ではありません。

呼吸療法にたずさわる私たちには,そのためにこそ,継続的な学習と知識のアップデートが必要です。

基礎から学び,共に理解を深め合う場がこの徳島人工呼吸セミナーです。

主催者からのご挨拶
MESSAGE

「呼吸療法を正しく学ぶ機会がとても少ない」という声をよく聞きます。

徳島人工呼吸セミナーは,西村匡司徳島大学名誉教授が2004年に初めて徳島市で開催し,以来2024年まで毎年継続して行われてきた歴史のあるセミナーです。本セミナーは,あらゆる職種の医療従事者が安全で正しい呼吸管理を学び,実践できることを目的としています。

2026年は再び徳島の地で開催いたします。スキルが身につく実践的な講義から,最新のトピックスの解説まで,あらゆる職種の方々に満足いただけるプログラムをお届けします。呼吸療法は多職種で取り組むことで,最大の効果を発揮します。そのため講師陣は多職種で構成し,さまざまな視点から呼吸療法を学ぶことができるセミナーを目指しています。

なお,徳島人工呼吸セミナーは3学会合同呼吸療法認定士の更新・受験申請点数の取得が可能な講習会に認定されています。ぜひ奮ってご参加ください。

みなさんと共に呼吸療法を学べることを楽しみにしています。

2025年8月吉日
徳島人工呼吸セミナー運営事務局
徳島大学病院
板垣 大雅

セミナー開催情報

セミナーの開催情報については、以下のリンクよりご確認ください

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